« ようやく73に♪ | トップページ | 青魔法探しの旅~ルモリア編~ »

2007年10月28日 (日)

日曜、言葉の玉手箱・・・1

 さて、いよいよ今日から始まる物語、毎週、日曜の午後1時にアップしていく予定デシ。
 ページ数がページ数だけに、かなりの長丁場になりますが、飽きずに、最後までじっくり読んで下さいw
 なお、登場人物がイメージしやすいように、適当に俳優さんを当てはめてみました♪ 読んでみて、違うイメージを持たれたら、あなたの好きなように配役を変更して下さいw
 
 主人公・ケント:泉澤 祐希、佐藤祐基
 父さん:西島 秀俊   母さん:和久井 映見
 リョウタ:小林 翼   ユウコ:北村 一葉

 アケミ:福田 麻由子   ニシヤ先生:小日向 文世
 和歌山のお爺ちゃん:笹野 高史  和歌山のお婆ちゃん:市原 悦子

 
 
   愛は燃え尽きぬ
                 星ノ ちゃびじろー
 
 第一章 流れ行く日常
 
 それは、いつもと同じ月曜の朝だった。ただ、目が覚めた時、風邪でもひいたのか、喉(のど)の奥が少しヒリヒリしていたことを除けば……。
 そしてその日は、珍しく母さんが起こしに来てくれなかった。
 少し寝過ごしてしまったボクは、着替えもそこそこに一階のリビングに下りて行った。
 「何で起こしてくれへんかったん? 遅刻するやんか……。」
 ブツブツ文句を言いながら、ボクはリビングの扉を開けた。中では父さんが自分の席で新聞を広げていた。
 やべ……怒られる…………。
 父さんからは、いつも『自分の事は自分でするように!』と言われていた。
 だから、母さんに起こしてもらってる事は、二人だけの内緒の事だった。
 
  ボクは恐る恐るテーブルに着いた。けれど、父さんは何も聞こえてなかったのか、それとも、朝一で怒るのも忍びない……と思ってくれたのか、黙って新聞を読み続けていた。
 だけど、テレビも付けず、新聞を読み続ける父さんからは、無言のプレッシャーが感じられ、ボクはいつ怒られるか、ビクビクしていた。
 それにしても、この時間いつもなら、父さんは外注の内職さんの所に、配達に出掛けてる筈なのに……。
 
 けれど、そんな沈黙の時間はすぐに終わった。母さんが台所からボクの朝食を運んで来てくれたからだ。
 「リョウタもユウコも、もう食べて出掛けたよ。ケントも早よ(はよ)食べて、学校行きや。」
 リョウタは小二の弟で、ユウコは幼稚園に通うボクの妹だ。
 ボクは二人の面倒をよく見ていた……半強制的に……ではあったけど……。
 と言うのもボクん家は、家の中に作業場があって、そこで父さんや母さん、パートさん達が働いていた。
 そこには大きな機械や商品が、所狭しと置かれていて、小さな子供が入ると危険だったり、商品を汚されても困るので、ボクが監視役になっていた。
 
 もっとも、仕事場に行くと、父さんから叱られる……って事は、幼いながら、二人にも判っていた事なので、その分、何をするにもボクに付いて来たがった。
 だから、ボクが自分の友達と遊ぶ時は、かなりうっとおしかった。
 けれど、公園で野球やサッカーする時なんかは、球拾いを頼むと喜んでするので、まぁ、ボクの可愛い家来みたいなものだ。
 
 それに、二人の面倒を見ていると、得する事もあった。
 母さんがたまに用意してくれるオヤツは、大体ボクが分けていた。
 そこでボクは、二人の見てない所で、先に半分ほど取り、残りをリョウタとユウコに半分ずつ分けていた。
 これは面倒見る兄としての、ささやかな楽しみ……と言うか特権だった。
 もっとも、ユウコはまだ判ってないみたいだし、リョウタはそんなユウコから少し分けてもらったりしていたので、今のところ丸く収まっていた。
 
 そんな事よりも、料理を運んでくれた母さんの様子を見て、ボクは悲鳴を上げそうになった。
 「か……母さん、どうしたん? 顔も手も真っ赤に腫れてるやん! 火傷したん? 冷やさなあかんやん!」
 ボクは自分でも驚くほど、泣きそうな声を上げてしまった。
 でも、母さんはボクの心配など何処吹く風で、ボクの目の前に朝食を並べると、
 「あぁ、これなぁ、ちょっと火傷(やけど)しただけ。今はもう、熱い事も痛い事も無いから……。あんたはそんな事よりも、早よ食べて学校行きなさい。」
 そう言われて、ボクは渋々トーストを手に取った。何だかジメッとしている……。
 よく見ると、真っ黒に焦げたトーストと目玉焼きが、びしょ濡れで置いてあった……。
 急に笑いが込み上げてきた。慌てん坊の母さんの火傷の原因は、きっとこれだ。
 でも、それにしては、火傷が酷い(ひどい)ように思えるのだけど……。
 
 「ケント、さっさと食うて行かな、学校遅刻するぞ。」
 ガサガサと音と立てて、父さんが読み終えた新聞を畳みながら言った。
 ボクは父さんの顔を見て、再び悲鳴を上げそうになった。
 「父さん、凄い血が流れてるやん! 頭割れとん違うん 医者行かな!」
 新聞に隠れて今まで気付かなかったけど、父さんの頭はザックリ割れ、顔が血に染まっていた。
 そして、父さんの着ていた服も、かなりの出血で汚れていた……。
 「あぁ、商品の整理してたら、棚が落ちて来てなぁ、頭でナイスキャッチや。」
 呑気そうにそう言うと、父さんは豪快にガハハ……と笑った。
 普段と変わらない素振り(そぶり)に、ボクは少しはホッとしたけれど、
 「でも、放っといたらバイ菌入るやん。消毒くらいしとかな……。」
 「そんなに大袈裟にせんでもええ。頭の傷は小さいモンでも、血は溢れる程流れたりするからな、これもそんなモンや。」
 「でも…………。」
 「それにもう、血ぃも止まってるし、痛い事も何も無いんや。」
 そう言われても、ボクはやはり心配で、薬箱から消毒薬とガーゼ、包帯を取り出して、
 「少し染みるかもしれへんで……。」
 と断るより先に、ザバッと消毒薬を振り掛け、ガーゼと包帯で応急措置をした。
 父さんは傷口が染みるのか、それとも照れているのか、神妙な顔付きでボクにされるがままになっていた。
 両親共働きで、小さな弟や妹の面倒を見ていると、これくらいの事は日常茶飯事で、包帯を巻くのも手慣れたものだった。
 母さんはその様子を羨まし(うらやまし)そうに見ていたので、ついでに消毒し、火傷用の軟膏を顔と言わず手と言わず、塗りたくっておいた。
 
 さて、壁の時計を見ると、そろそろ八時半になろうとしていた。
 ボクは慌ててランドセルを掴む(つかむ)と、玄関に駆け出した。
 「行ってきまーす。」
 クツをケンケンと履き(はき)ながら、ボクは玄関から飛び出した。
 「行ってらっしゃーい。」
 母さんも大きな声で、いつものように送り出してくれた。
 鉄筋三階建ての我が家から、ボクとリョウタの通うタカカミ小学校までは、走って十分の所にあった……今日は歩くと遅刻するので……。
 また、自宅の建物とは別に、ガレージの上にも後から増築されていて、家族は区別するため「ガレージの二階」「~三階」と呼んでいる。
 
 そうそう、鉄筋三階って言うと、お金持ちの家……みたいに思われるかも知れないけど、ボクん家は筋金入りの貧乏だ……。
 それに、自宅と工場、倉庫を兼ねているので、実際はそれほど大きくも広くもない。
 自宅の一階半分とガレージの二、三階が工場の部分で、自宅の二階と三階が家族の暮らしている所だ。
 
 ここだけの話、父さんや出入りの大工さんに言わせると、ボクん家は違法建築と言うらしい。
 「どういう意味?」
 以前、そう尋ねた時、父さんは豪快に笑って何も答えてくれなかった。
 仕方がないから、ボクは辞書とかで調べて、もう一度父さんに、
 「違法建築って、建てたらあかん建物なん?」
 「よう調べたなぁ、大したモンや。」
 父さんはまたもや豪快に笑って、誉めてくれた。
 「大人になったらなったで、色々『大人の事情』言うモンがあるんや。お前もそのうち判ってくるやろけどな……。」
 そう言って、ボクにウインクして見せた。あんまり似合わない仕草に、ボクが『ウゲッ』って吐く真似をしたら、父さんにグウで殴られた……。
 

|

ウェブログ・ココログ関連」カテゴリの記事

パソコン・インターネット」カテゴリの記事

文化・芸術」カテゴリの記事

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

言葉の玉手箱」カテゴリの記事

趣味」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く