愛は燃え尽きぬ~改訂版~08
*** はじめに ***
この物語に登場します、地名、人名、組織名など、全ての名称は架空のモノであり、それっぽく書いてますが、全部デタラメ・・・デシw
地名、人名の検索でここに辿り着いてしまったアナタ・・・ご愁傷様デシw お気の毒とは思いますが、我が身の不幸を嘆かず、息抜きにチラ見していって下さいませ♪
*** *** *** *** *** *** *** ***
ドクン…ドクン……心がゆっくり大きく脈打つ度に、ボクの心から恐怖が追い出され、その替わりに怒りが込み上げて来た。
ボクはゆっくり立ち上がった。
そして、勇気を振り絞り、
「……あんた、ホントにボクの父さんか……?」
目の前にいるのがニセモノなら、一週間仕事をしなかった事も、母さんに遣り込められた事にも納得がいく。
(ひょっとしたら、コイツ等、弟達だけじゃなく、本物の父さんや母さんまで……?)
父さん……だったバケモンが、呆れたように溜息を吐いた。
そしてそれは、ボクを嘲笑っているようにも見えた。
「……あのな…………。」
次の言葉も待たず、ボクは家族を失った悲しみと、奪われた怒りで、心が一気に弾けた!
「うおおぉぉ……!」
ボクは父さんのバケモン目掛け、頭から突っ込んだ。
「リョウタを、ユウコを……みんなを返せーっ!」
父さんのバケモンは、ボクの突進を交わそうともせず、ドスンッ! と、まともに受け止めると、そのまま後ろに引っ繰り返った。
「ちくしょ~~、ちくしょ~~!」
ボクは悲鳴のような絶叫を上げ、父さんのバケモンに馬乗りになり、顔と言わず、体と言わず、無我夢中で殴り続けた。
怖かったのと、悲しかったのと、悔しかったのと、腹立ったのと、それと、それと……。
ボクはグシャグシャの気持ちで、それでも叩き続けた……。
ボクの両手はみるみる腐った血の色に染まった。
父さんのバケモンは、仰向けに倒れたまま、何の抵抗もしなかった。
身動き一つせず、見えてるのかどうか判らないような、赤黒く濁った瞳で、無表情のまま、ボクを見ているだけだった。
「…………それだけ元気があれば……お前は強く生きていけ…………。」
息も絶え絶えの消え入りそうな声で、父さんのバケモンは小さく呟いた。
いや、声の調子が、以前の父さんの声に戻っていた……。
「…………えっ」
いつの間に近付いて来たのか、隣で立ち竦んでいた母さんを父さんは見つめた。
そして、頷くように目配せすると、父さんは霧のように静かに消えていった……。
「……ケント、あんたはいつも、人の話を最後まで聞かないから……。だから、怖い思いするのよ……。」
「…………えっ」
母さんの声も、元の調子に戻っていた。ボクは呆然として立ち上がった……。
「ケントが寝てる間に、父さんと母さんが向こうに行けば、夜が明ける頃、あんたは元の世界に戻れてたのよ。
それなのに、あんたは起き出して来てしまった…………だから、母さん達の手で、夜が明ける前に、あんたを元の世界に送り出さなきゃならなくなったのよ……。」
母さんはヨロヨロとボクに近付き、炭のようになった手で、ボクの顔と言わず頭と言わず、愛おしそうに撫で回した。
「それでも、まぁ、最後にこうして話せてよかったわ……。」
「最後って…………?」
全てのパズルピースが、ピシッと揃った気がした。
そして、それはボクが今まで生きてきた中で、一番悲しい真実が判った瞬間だった。
……ボクの心は凍り付いた。
さらに、急に目の前が真っ暗になったような気がした。
闇の中に、一人ポツンと置いて行かれるような気がした。
「……こんな格好になってしまって……怖がらせてちゃったわねぇ……ゴメン……。」
「…………母さん…………。」
「……食事も、冷たいモノばかり食べさせてしまったわねぇ……ゴメン……。」
母さんの白く煮えたように濁った瞳から、血のような、涙のようなものが溢れてきた……。
ボクも目頭が熱くなってきた。言いようのない不安な気持ちで、胸が締め付けられた。
「……でも、今日のご飯は温かかったよ……。」
「……ここは火の無い世界だから……でも、最後の日くらい、ケントに熱いモノ食べさせたかったから……。」
母さんは申し訳なさそうにそう言った。
その瞬間、ボクは母さんの手が黒こげになった、本当の理由を悟った……。
ボクは切なさで胸が一杯になり、涙がポロポロ零れ落ちた。
「母さん、ありがとう、ホントに美味しかった! 最高の御馳走だったよ……。」
母さんは堪えきれなくなって、ボクをギュッと抱き締めた。
ボクも母さんにしがみついた。
ヒックヒック……涙はいくらでも溢れてくるのに、言葉は出て来なかった……。
「……汚してゴメンね……臭くてゴメンね…………。」
母さんはボクの頭を優しく撫でながら、何度も何度も謝った。
母さんは何にも悪くないのに、ただ、ひたすら謝り続けた……涙で途切れ途切れになりながら……何度も何度も……。
「……ゴメンね……ゴメンね…………一人にして…ゴメンね…………。」
ドンッ! と勢い良く、母さんはボクを突き飛ばした。
ボクは洗面台にぶつかりそうになり、思わず鏡台に手を着いた。
その瞬間、ボクの手は鏡をすり抜け、勢いそのままに、反対側に転げ出てしまった。
「母さん」
慌てて起き上がると、鏡は目映い光を放っていた。
目も眩むような光の中から、微かに声が聞こえた。
「父さん達は、もう行かなきゃならん。でも、お前はなるべく後から来い。良いな?」
「ケント、ゴメンね。側にはもう、いてあげられないけど、いつでも見守ってるからね……。」
「父さん! 母さん!」
鏡から溢れてくる光は、ますます強くなり、目を開けていられなくなった。
ボクは立ち竦んだまま、止処なく流れる涙で顔をぐしょぐしょにしていた。
「お願いだから、行かないで! ボクを一人にしないで」
父さんに謝りたかったし、母さんにお礼を言いたかったけど、ボクは頭が真っ白で、言葉が出て来なかった……。
「兄ちゃん、良い子で待ってるから、また遊んでね。」
「兄ちゃん、ユウコとも遊んでね?」
不意にリョウタとユウコの声が飛び込んできた……。
幼い弟と妹の無邪気な声に、ボクはとうとう、その場に泣き崩れてしまった……。
「……バカ、男がそんな大声上げて泣くな。泣きたい時こそ、大声で笑え。笑って涙を吹っ飛ばせ。」
「…………父さん……。」
「……それじゃ、またな……。」
ボクが顔を上げると、鏡の向こうでは、父さんと母さんがリョウタとユウコを抱っこして立っていた。
逆光の中にいるのに、みんなの顔はハッキリ判った。
みんな精一杯笑っていた。
ボクも笑った……涙を拭いて、必死で笑った…………。
やがて、鏡は溢れる光に耐え切れず、パリパリッとヒビが走ったかと思うと、パァーンと弾けるように砕け散った。
そして、その勢いにボクまで一緒に吹き飛ばされ、キラキラした光のシャワーと、小さく消えて行く、父さんのガハハ笑いに見送られながら、気を失っていった……。
鼻を突く消毒のニオイと、喉のいがらっぽさに目を覚ますと、見慣れた四つの顔が、ボクを心配そうに覗き込んでいた。
「……お爺ちゃん……お婆ちゃん……。」
広島と和歌山から、取る物も取り敢えず、駆け付けてくれたのだろう。
四人が四人とも、シワシワの顔をクシャクシャにしていた。
「……その晩、未曾有の大地震が起こってな…………。」
お爺ちゃんが重い口を開いたのは、お医者さんが病室を出て行ってからだった。
地震の後、あちらこちらで火の手が上がり、折からの木枯らしも手伝って、あっという間に炎は街を飲み込んでいった。
まだ仕事中だった父さんは、別の部屋で寝ていたボクを助け出し、母さん達を助け出そうと、火が回り始めた家に戻り、それっきりになった。
焼け跡から、リョウタとユウコを庇うように、箪笥の下敷きになった母さんと、そのすぐ隣で、倒れた柱に頭を挟まれ、それでも手を伸ばして亡くなってた父さんが発見された。
あの日の地震と火災のせいで、ボクは家族だけでなく、多くの友達と、ニシヤ先生も失った……。
みんな、風邪で休んでた訳じゃなかったんだ……あの時はもう、……。
人は亡くなると、七日かけて、それまでお世話になったり、所縁のあった人の所に、最後のお別れを言いに行くそうだ。
あの日、どこか寂しそうだった先生は、ボク達にお別れを言いに来てくれたんだ……。
でも、父さんと母さんは、どこにも挨拶に行かず、最後の最後まで、ボクの側にいてくれたんだ。
「助け出されたものの、ケントも煙をかなり吸ってたみたいでなぁ……。」
ボクは病院に運ばれ、手当を受けていたけれど、状態はかなり悪かったらしい。
そんな時だ、仮設の霊安所から、父さんと母さんの遺体が消えたのは……。
何しろ、身元を確認するために、毎日大勢の人が押し寄せて来た所だ。
係の人達も、親族が連れて帰ったのだ……と、思っていたらしい。
だが、一週間後、焼けたボクん家から、二人の遺体が忽然と現れ、大騒動になったそうだ。
丁度同じタイミングで、ボクの容態も快方に向かったものだから、お爺ちゃん達は確信した。
二人が亡くなった後も、形振り構わず、最後の力を振り絞り、ボクをこの世に連れ戻したのだ……と。
「……ただ、それからも余震が度々襲ってきてなぁ…………。」
終章 今のこと
お爺ちゃんの声のトーンが急に下がった……と同時に、部屋の明かりが消えて、真っ暗になってしまった。
「……その内の一回は、余震とは思えん程大きく揺れて……。」
お爺ちゃんの声が消え入りそうなほど小さくなっていく……。
その時、不意にどこかから焦げ臭いニオイがしてきた……。
ボクは殆ど動けない頭を懸命に起こし、ニオイの元を探ると……それは、ボクの体がブスブス……と燻ってるニオイだった……。
真っ暗になった部屋の天井に、ボクを焦がす煙が集まり、映画のスクリーンのように、その時の光景を映し出していた。
ベッドで眠り続けるボクに、覆い被さるように、かばってくれたお爺ちゃん達……。
その上に落ちてくる天井……そして、床も抜け……あちこちから上がる火の手……。
壁や天井に押し潰された人達や、生きながらに炎に巻かれた人達を見ても、不思議なほどボクは冷静だった。
きっと、それまでのショックがリアル過ぎただけに、感覚がマヒしてたのかもしれない。
「すまなかったなぁ……せっかく助かった命を……。」
「そうじゃそうじゃ、別の病院に移しておれば、こんな事には……。」
口々に謝ってくれるお爺ちゃん達。
「気にしないで、お爺ちゃん……それより、ボクのためにお爺ちゃん達まで巻き添えにしちゃって、ゴメンね……。」
「……ケントは優しい子じゃのぉ……。」
「それにしても、神も仏も無いものか……こんな年端も行かぬ子供を二度までも惨い目に遭わせるとは……。」
神や仏はいなくても、死に神はいるかも……そう思ったけど、ボクは口をつぐんでおいた。
「そんなこと言わないで……ボクもう、痛くも何とも無いんだから……。」
急に体が軽くなったような気がして、ボクはベッドから起き上がった。
「よし、それじゃ、そろそろ行こうかのぉ……。」
「どこへ……?」
「ケントの父さんや母さんが待ってる所じゃよ……。」
「は~~い。」
ボクはお爺ちゃん達の後に付いて、真っ暗な闇の中をどこまでもどこまでも歩いていった…………。
了
*** *** *** *** *** *** *** ***
約2ヶ月に渡る連載も、今日で終わらせることが出来ました。全開とは違う、救いのないエンディング……なのデシけど、どうデシたか?
宜しければ、感想を聞かせて下さい。
年が明けてからは、いよいよ『一姫クエスト』第2部の連載を始めます。第1部とは少し変わった展開になります。
若干シリアス度が高まってるかも知れませんねw こちらも宜しければ感想を聞かせて下さいな。
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コメント
はじめまして。
もともとインコの育て方でこのブログに訪れたました。
インコ巣引きの手引きすごく参考になりました。
ところで、本題ですが、「愛は燃え尽きぬ」は途中から読んだのですが、率直な意見を言わせてもらうと、「ほんとに救いようがねえなあ(笑)」
自分としてはもっと、火災で右腕を失ったけれども懸命に生きたみたいのを期待してました。ちょっとありきたりな気もするけど(笑)
でも、そうでもしないと死んだ両親は浮かばれないだろうし...と、言うのが本音です。
投稿: クロマニヨン | 2008年12月28日 (日) 22時34分
クロマニヨンさんへ
これからも、飼育に関して疑問が湧けば、どこのコメントでも結構デシ、ご一報下さい。


初めまして、コメントどうもありがとうございますぅ。
インコの件、お役に立てて後衛デシ
ボクの判る範囲で恐縮デシけど、くどいくらい……もとい、詳しくお答えします
それから、小説の件も、貴重な感想をホントにありがとうございました。
在り来たりではありますが、改訂以前のバージョンには、少し救われる感……のある終わり方をしてます……やぱし、そっちの方が良かったデシかねぇ…………。
再改訂する時は、もう一度よく考えて、より良い方向へ進めるよう、頑張ります。
投稿: ちゃびじろー | 2008年12月29日 (月) 09時46分